伊勢神宮② 日本人と神道の歴史的あり方
■神道=精神×物質の豊かさ
伊勢神宮の祈りは精神的な高さと物質的な豊かさ。
幸福な人生を送るためには、平和×精神×経済(物質)豊かな暮らし。贅沢な暮らしではなく、自然や他者と調和したシンプルな暮らし。
『衣食足りて礼節を知る』=思いやりや節度のある人生を生き方をするためには、衣食住が十分満たされる必要がある。古代では食料の豊富さ=経済力。
多様性①海外の宗教と日本の宗教の融合
■重層信仰(シンクレティズムSyncretism)→日本独特の宗教観・渾然一体
複数の異なる宗教への崇敬心を共存させ、何の抵抗感も抱かないこと。
例:初詣は神社、結婚式は協会、葬式は仏教寺院、バレンタインにクリスマスもする日本。
背景:日本列島の自然環境=四季があり、台風、地震、大雪などダイナミックな現象の連続。それでいて米がとれて魚も食べられる。昔の人は、これらを神様のなさえる業と考え、アミニズムの発想につながった。
■キリスト教、イスラム教、ユダヤ教→ 一神教・唯一絶対神
砂漠で生まれた宗教。厳しい土地で暮らす人々は、なぜ自分はこんな過酷な環境で生きなければならないのだとうと考えた。その理由は宇宙に何か超越的な存在があり、その存在が人々に試練を与えているという思想。
■統計
世界がもし100人の村だとしたら、キリスト教(33人)イスラム教(24人)ヒンズー教(14人)仏教(7人)、アミニズム(←神道はここ10人)、その他(12人)。
■なぜ日本人は無宗教と思い込んでいるのか?
おおらかな神道の精神性が生活にあまりにも根付いて、自覚しにくいから。
例:いただきます、ご馳走様。→すべてのものに神が宿り、そのおかげで自分が成り立つという神道の世界観。海や山に何か神聖さを感じて手を合わせてみたくなるのも、自然な信仰心。
■日本人の死生観
柳田國男の1945年『先祖の話』より。
人が亡くなると、その魂は近くある秀麗(しゅうれい:特に立派で美しい様)な山に帰るとされていた。そして、一定の時間を経てその家の子孫や子孫に関係のある一族に生まれ変わると言われている。⇒神様はそもそも山にいて、季節に応じて里に降りてきて人の営みに力を与えてくれる信仰が生まれた。冬の間、神様は山におられ、春が来て農耕が始まるころになると、村人がその山宮(やまみや:山の麓にある集落)におみこしを担いで登り、神さまを迎えに行く。そして、村にお迎えする。=春祭り。
秋の収穫で神さまに感謝する=新嘗祭(にいなめさい)
その後、神さまを山宮まで神輿に載せて送り、次の春まで山で霊力を高めてもらう。
多様性②■神々さまの豊かな個性
1)上下関係がない⇒その土地にそれぞれ神さまの役割があり、神さま同士は対等な関係。
2)天照大御神⇒すべての神さまの良いところを引き出す力がある。徳の高い神さま。八百万の神さまの中心的存在。
3)善い神さま、悪い神さまがある。⇒ふたつの対立する者同士が相まって、バランスを取りながら世界が発展する。悪には悪の役目があり、世界に必要。
4)寛容な世界観⇒縄文時代から今まで宗教戦争がなく、多文化や宗教を受け入れてきた。日本人の柔軟性、受容力、個性を認める多様性。
■問題解決 存在を認め、能力を認め、共存共栄に協力する。
神々が会議で知恵を出す×それぞれの得意分野で協力し合って問題を解決していくやり方。
例:天岩戸エピソード:企画者、舞台、音響担当、司会者担当などそれぞれの強みを活かす。
■宗教三大要素をもたない神道
宗教の定義:『戒律(ルールや規律)』『経典(教え、思想を記した書物)』『教祖(宗教)の創始者』の3つを兼ね備えている事。
神道は基本的な決まり事はあるけれど、厳しい戒律はない。
例:潔斎(けつさい)=神事の前に身を清めること。忌服(きふく)=身内の死の際には喪に服すること。経典なし。古事記や日本書記など『神典』は存在するけれど、これから歴史書や当時の法律書であり、教えを記した書物ではない。教祖:天照大御神は崇敬の対象として信仰されているが、人に厳格な教えを説いたわけではない。著者、吉川さんは神道を信仰Faith,Beliefと定義。
宗教 |
戒律 |
経典 |
教祖 |
キリスト教 |
教義 |
聖書 |
イエスキリスト |
イスラム教 |
例、ハラール肉 |
コーラン |
マホメット |
仏教 |
五戒 |
仏典 |
ブッダ |
神道 |
なし |
なし |
なし |
参照:
吉川竜実:一番大事な生き方は、伊勢神宮が教えてくれる。(サンマーク出版)