見わたせば 比良(ひら)のたかねに 雪きえて 若菜摘むべく野はなりにけり
季節:三月上旬。冬の寒気があけて春の兆しを実感する頃。
■読み:みわたせば ひらのたかねに ゆききえて わかなつむべく のはなりにけり
■意味:遥か遠くを見渡すと、比良の高い峰から雪が消えている。なるほど、京都はすでに若菜を摘んでよい野原の時季になっているのだなあ。
■解説:比良山は古くから京都の春の到来の表現に深い関りがあった。ここでは山の雪のありなしで季節の移り変わりのしるしとして兼盛は表現している。都人の春の実感が身にせまり、おもわず口ずさみたくなるような趣がある。
他、『比良の八講の荒れ終い』⇒比良山から吹きおろしてくる強風が終わると京都に本当の春がやってくる。
比良:滋賀県琵琶湖の西側沿いにそびえる山系。京都から見える蓬莱山(ほうらいさん1173m)
若菜:春に芽生えたばかりの食用の草の事。
■平兼盛(たいらのかねもり/ ?-990):平安時代中期の貴族・歌人。三十六歌仙(名人36名)の一人。平篤行(あつゆき)の三男。
参照: