銭掛松(ぜにかけまつ)
■伊勢別街道沿いにある、松を祀るお堂。お堂の中には、松の古木がお産られており、境内には何代目かの松が植えられている。松の隣にある常夜灯には1822年(文政)、1857年(安政)再建とある。
■エピソード:西国(さいごく=日本西部の諸地域、不特定)に住む男が伊勢参りにこの地までやって来た。しかし、手持ちのお金がわずかなため、そばの茶店の人に伊勢神宮まであとどれくらいか尋ねた。すると主人はまだ半月ほどかかると答えた。それを聞いてこれ以上の旅は難しいと諦めた男は、松の木に銭をかけて、ここから神宮をお参りし(遥拝=ようはい)、帰路についた。
茶店の主人は、嘘をついて銭をせしめる事が出来たと、男のかけていった銭の束を盗もうと近寄った。すると、銭の束は白蛇に変わり、主人をにらみつけ威嚇した。肝を冷やした主人は、銭を盗むこともできず、そればかりか以降客足も遠のいてとうとう茶店も潰れてしまった。
一方、帰郷した男は、実際に伊勢神宮へ行った者からその場所が神宮まで近かったことを聞き、翌年再び参拝を決意する。そして、銭を掛けた例の場所へ行くと、銭の束がそのまま残されていた。男はそれを取り、無事神宮に納めたのである。⇒これがきっかけに道中の安全を祈願する風習が広まった。またこの松に銭をかけると参宮と同じくらいのご利益があると広まった。
※せしめる=うまく立ち回って自分のものとする。横取りすること。
※肝を冷やす=驚き恐れてひやりとする。
■伊勢別街道(いせべつかいどう関宿―江戸橋)は全長22キロほどの旧街道である。江戸時代には京都方面から参宮客で賑わった。常夜灯や格子造りの古い町並みが多い。
※伊勢街道は今の国道23号沿い、四日市・日永の追分(おいわけ)~伊勢神宮まで。
■往時(おうじ)をしのぶ:昔(時代)のことをしみじみ思うこと。懐かしむこと、回想すること。
■連子格子(れんじこうし):通風、採光を良くしながら、防犯のため視野を遮るデザインとなっている。
参照: